案外楽しいかもしれないビル文字の世界

今日はビル文字の話です。どんどん行きます。



「石井ビル」。「石」の左上のあたりがなんとなく「后」っぽくて、個性的。



「澤田ビル」。「澤」の上のほう、「目」が横向きになった部分が、「四」になってる。めずらしい。



「オガミビル」。どうにも「ミ」に違和感がありますが……。


明朝体の「ミ」を確認してみると……。点の向きを逆に貼っちゃったかも?



「イトーピア」。これに違和感を覚えるのが良いことかどうかはともかく。


音引き「ー」を、普通の明朝体と比べると、書き始めの形が違います。


この「イトーピア」では、縦書き用の音引きを、横に倒して使ったのだと思われます。

音引き「ー」の横倒しはあながち間違いでもなくて、その昔まだ鉛の活字を並べていた時代には、普通に縦書き用の音引きを 90 度回転させて、横書きに使っていたとのこと。

音引き横倒しは、ある意味、「正しい活字の使いかた」だったようです。

「イトーピア」のデザインをされたかたは、おそらくこういった活字文化の歴史を重んじてらっしゃるのだと、勝手に想像してみたり。



写真は 1948 年に発行された「欧文活字」の復刻版の本文。確かに横倒しの音引きです。

復刻版 欧文活字―付録・タイポグラフィ習作1942 My Typography

復刻版 欧文活字―付録・タイポグラフィ習作1942 My Typography



……などという、長い長い「本題」はともかく、やっと「余談」に到達しました。

この「毛筆で書き始めのところのふくらんだ部分」のことを、ずっと私は「うったて」と呼んでいました。ですが、どうやら「うったて」は方言らしいということを、今日はじめて知りました。→Google「書道 うったて」

方言だからって、別に何も恥じることなどないと思うのですが、どこかで動揺している私がいます。いやはや。