振り仮名は誰のために

振り仮名というのは、当たり前ですが、漢字を読めない人のためにあるものです。振り仮名があれば、難しい言葉でも読むことができます。

他の国の言語ではほとんど見かけません。日本独自の文化と胸を張りたいところです。私の胸を張ってもしかたないのですが。

その立派な振り仮名ですが、問題がないわけでもありません。確かに振り仮名が振られていれば、声に出して読むことはできます。でも読みかたがわかっても、意味まではわかるとはかぎりません。


そんなわけで(?)この看板です。例によって判読できない写真で申し訳ないのですが、以下の文章が書かれており、振り仮名が振られています。

この倉庫には出水から河川の堤防を守るための大切な器材を格納しています。瓦や壁を破損したりまた中へ入ると危険ですから絶対にしてはいけません。


まずは「倉庫」。これに単純に「そうこ」と振り仮名を振ると、小さな子供は「そうこってなに?」と首をかしげることでしょう。漢字を知らない子供には、「たてもの」のほうが優しいと思われます。


次は「出水」。「しゅっすい」なんて言葉は子供には通じません。(ペンキで読みにくいですが)「おゝみづ(おおみず)」とあります。これなら子供にも通じます。今どきの子供が繰り返しの「ゝ」を読めるかどうかは微妙ですが、きっと義務教育で教えないのが悪いのです。なぜかここだけ歴史的仮名遣いなのは、愛嬌でしょう。……などと言い訳して次へ。


「河川」は、当然「かわ」です。「かせん」なんて難しすぎます。これは良い感じ。


「器材」は「どうぐ」。快調です。


「格納して」のあたりは、振り仮名が少しはみ出しています。おそらくは平仮名もまとめて「格納し」までを「いれ」と読ませているのでしょう。全体では「いれて」になります。平仮名にも振り仮名をつけるのは、ちょっとどうかと思いますが、子供に自然に読んでもらうためには仕方ありません。……苦しい言い訳になってきました。


「破損」も、子供は使わない言葉です。ペンキが邪魔ですが「こわ」と振ってあります。「こわした」となり、子供にもわかりやすい。


最後は「危険」に「あぶない」。「あぶないです」という文は、日本語文法的には微妙ですが、まあ、子供ですから。……って、すでに言い訳になってないし。

結論。振り仮名は日本独自の文化なので、大切にしましょう。

※関連→「片仮名に振り仮名