正字正仮名と文字サイズ、続き

追記(9/2):簡単に文字サイズを変更する方法(ctrl+マウススクロール)を教えていただきました(iwaman さん、ありがたうございます)。ですので、下記にだらだら書いた問題は関係なくなりました。無視してください。お騒がせしてすみませんでした。

正字正仮名と文字サイズ」の続きです。

舩木直人さん、トラックバックありがたうございます(「はてなの茶碗」の「文字の裏通り - 正字正仮名と文字サイズ」)。

具體的にどの(正字正假名を用ゐてゐる)サイトを指して、文字を小さくしてゐると看做してゐるのでせうか。

大雑把には、CSS での指定が medium 以下(100% 以下)のサイトについて「小さくしてゐる」と考へてゐます。かういふサイトは、わりと簡単に見つかると思ひます。普通は、CSS で相対指定してゐるのは、「小さくしてゐる」とは言ひませんが、そこを敢えてこのやうに書いた事情は、以下の長い文章を読むことで、ご理解いただけると信じてをります。


上記の記事で参照されてゐる、同じく舩木さんの記事「本題とは關係無い處に突込む」から引用。

文字の大きさが變へられない印刷物ならまだしも、CSSでフォントのサイズを變へるなり、ブラウザのフォント設定を大きいものにする等の方法があるのですから、見映えだけで正漢字の使用を控へるのは頂けないと思ひます。

これは、「視力が弱いことが原因で読みにくい」場合を想定した議論だと理解してゐます。この場合、正字が読みにくい人は、同程度に英字も読みにくいと考へられます。この場合は、舩木さんのおつしやる通りだと思ひます。賛成です。

ですが、私が昨日の記事で書いたのは、視力のことではありません。ディスプレイの解像度のことです。現在、世間一般で利用されてゐるディスプレイの解像度が低いため、正字は、すぐに潰れてしまひます。ですが、英字は滅多なことでは潰れません。正字は駄目で、英字は大丈夫、といふところが、先の視力の場合とは決定的に異なります。

長くなりますが、順を追つて書きます。

現在普及してゐるディスプレイの解像度は、おほむね 100dpi 前後しかありません。どういふことかと言ふと、たとへば 12pt の文字を表示した場合、17 ピクセル程度になります。17 ピクセルしかありません。

単純に、1 ピクセルごとに白線黒線を引いたとしたら、9 本の線を引くことができます。たとへば「晝」と言ふ字で、横画が 9 本あります。ぎりぎりセーフと言ひたいところですが、実際には縦画を上に出す必要があるので、17 ピクセルには入り切りません。つまり、「晝」の字を 12pt で表示した場合、文字が潰れて字画が判別できなくなつてしまひます。正字には、もつと複雑な字画を持つ文字がたくさんあります。

実際には、少しくらい潰れても、読み取りに不自由はありません。上記の「晝」が読めないなんてことはないと思ひます。漢字は、字画が不正確でも、なんとなく読めるものです。「馨」なども、12pt であればなんとか読めますが、これより小さくなると、かなり厳しい状況になります。

とりあへず、現代のディスプレイ(100dpi 程度)を想定する限り、正字の文字サイズの最低ラインは、12pt あたりだといふことになります。読者によつて個人差はあると思ひますが、大雑把にはこんなものだと思ひます。

つまり、ブラウザの標準の文字サイズが 12pt になるやうに設定しておけば、ストレスなく正字サイトを閲覧できると思はれます(普通のブラウザであれば、初期設定で、おほよそ 12pt 程度のサイズになつてゐると思ひます)。

ですが、実際には、そのようにはいきません。なぜなら、サイトによつては、本文の文字サイズを small(100% 以下のサイズ)に指定してゐるからです。さういつたサイトもストレスなく閲覧しようと思ふと、標準の文字サイズを 12pt にしたのでは、まだ足りません。経験的には、標準の文字サイズを 16pt 程度にする必要が出てきます。

これで、正字のサイトはストレスなく読めるやうになりました。問題はこれからです。

ブラウザは、正字のためだけにあるわけではありません。同じブラウザで、英字のサイトを読むこともあります。正字のために、標準サイズを 16pt にしたブラウザで、英字のサイトを閲覧すると、予想外に大きな字が表示されて驚きます。驚くだけなら良いのですが、一行に表示される単語数も少なくなり、一画面に表示される文章量も少なくなつてしまひます。読みにくくなつてしまひます。

つまり、正字を読みやすくすると、英字が読みにくくなつてしまふのです。かういふ状況は、あまりよろしくないと思ふのです。

ここで、もし、正字のコンテンツに対して、medium(100%)以上のサイズを指定していただけるなら、small などの小さいサイズの指定を避けていただけるなら、標準の文字サイズを 16pt まで大きくする必要はありません。12pt 程度に設定することができます。この程度であれば、英字のサイトもストレスなく読むことができます。

……と、かういつた事情で、「文字サイズを小さくしないで欲しいのです」といふお願ひを書かせていただいた次第であります。

正字は、字画が複雑、といふ特徴を持つた表記法です。字画が複雑といふことは、つまり、低解像度での表示に弱い、といふことです。CSS での指定においても、さういふことを考慮していただければ……、と思ふのです。考慮しない場合、上記につらつらと書いたやうな事情により、正字以外のサイト(たとへば英字のサイト)が読みにくくなつてしまふのです。

長々と書いてしまひましたが、要するに、視力(つまりは読者の個人差)に起因する問題ではなく、表示媒体(多くの読者にとつて、ほぼ共通のもの)に起因する問題だと考へてゐます。わかりにくい文章で申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願ひします。