字形字体と書体

「秋」について調べていて、いつのまにか自分が、字形字体に対して画一的な見方を持ってしまっていることに気づいた。

「字形字体は、書体(篆書・隷書・楷書など)と関連付けて考えるべきだ」というもの。


たとえば「秋」がそうなんだけど(「『秋』の右左」)、「つちよし」も似たような事情があると思う。「つちよし」は、吉野家とかで有名(?)な、下の長い「吉」のこと。

「吉」は、隷書ではほぼ確実に「つちよし」になっている(おそらく波磔のせい)。隷書以外だと、上が長いのや、下が長いのや、いろいろあるけど、隷書は「つちよし」しかない。

たぶん、隷書が流行(?)した時代に「波磔をきれいに書くために『吉』は下を長く書きなさいよ、『つちよし』にしなさいよ」といったルールができたのだと思う。これが長い年月で風化して「理由はわかんないけど、とにかく『吉』は下を長く書くんだよ、『つちよし』のほうが正しいんだよ」という具合になったのだと思う。

で、たとえば吉田さんちのおじいさんが、孫に教えるときに、

「昔はなあ、ちゃんとしたところで名前を書くときには『隷書』っていう書きかたがあってだな、そういうときには『吉』の下を長く書いたもんだよ。隷書のときは下を長く書かなきゃいけないんだよ」

とか教えたのが、その孫がおじいさんになって、さらにその孫に伝えるときには

「うちの『吉』は本当は下が長いんだよ」

みたいになるんじゃないかと。

なんか話がそれたけど、まあ、ともかく、字形字体と書体とは関係あるんじゃないかなあ、と。