ぎざぎざの「工」


ぎざぎざの「工」は、急激に減少している字形だと思います。古い看板などでは見かけますが、新しく書かれる(描かれる)字では、「ぎざ工」が使われることはもうないだろう、と思っていたのですが……。

工事現場で見かけました。なんだか嬉しい。

「ぎざ工」は、かなり大きな漢字字典でも見当たらないので、わりといい加減な俗字だと思っていたのですが、真面目に調べてみると、どうも私の勘違いだったようです。


金石大字典より。


書道六體大字典より。

いわゆる「金文」や「隷書」に「ぎざ工」があり、歴史的には非常に古くから存在している字形でした。非常に長い期間、普通の「工」と「ぎざ工」は並存していたようです。しばしば隷書の手本とされる石碑「曹全碑」などにも「ぎざ工」があることを確認しました。俗字とはいえ、それなりに由緒正しい字形のようです。

「俗字」という概念を確立したのは、たしか説文解字だったと思うので、これにあたれば、もう少し「ぎざ工」について理解が深まるのではないか? ……と思ったのですが、さすがに町の図書館には説文解字は置かれていませんでした。